漫画を読み続けるということ、あるいは歳を重ねながら読む漫画の面白さについて
初めて読んだ漫画は覚えていないけれど、初めて母親に買ってもらった漫画雑誌が99年の別冊コロコロ2月号だったことだけは覚えている(さっき調べた)。今年が2015年だから、自分はかれこれ(キリが悪いけど)17年も漫画を読み続けていることになる。
周りの友達が少しずつ漫画から距離を置くようになって久しいが、自分は相も変わらず日々雑誌で単行本で(ここ数年ではウェブや同人誌で)漫画を追い続けている。そのおかげで自分が寝床にしている部屋は紙の束で溢れている。
『森山中教習所』(真造圭伍)をしばらくぶりに読んだ。だいたい年一回くらいで読み返してるんだけど、何度読んでもしんみりした気持ちにさせられる。
これを初めて読んだのが4年前で、自分は当時18歳だった。主人公の清高は作中の大部分で20歳という設定で、高校生だった自分は(実際はどうだったか覚えていないけど)単純に良い漫画だなあ、という感想を抱いた。
あれから4年、自分はちょうど22歳になった。清高の年齢を通りすぎて「漫画のキャラクターよりも年上になってしまう」という状態をストレート過ぎるほどに受けている。漫画に限った話ではなく、小説でも映画でも、長年何かしらの「物語」を好きでいる人は何度となく経験していることだろう。自分はこの感覚にハマった時の少しやるせない気持ちになる瞬間がこの上なく好きだ。
十何年も漫画を読み続けていると、本棚に見えるそのタイトルがまるで日記帳のように読んだ当時の気持ちを強く、あるいはうっすらと思い出させる。
ところで、漫画が(映画、アニメ、小説とか)他の媒体と大きく区別される部分はどこだろうか。自分が思うに漫画の最大の特徴はその鑑賞スピードの多様性にあると考えている。
小学生の頃に『MAJOR』(満田拓也)の中学生編を一気に読んだんだけど、1冊10分くらいで読んで「やたら早く読んだなあ」と思ったことをなぜか覚えている。何も作品の内容が薄いというわけではない(夢島編の方が好きだけど)。大抵の小学生は漫画をイラストとセリフで読み飛ばすものだと思う。
それから10年近く経って、漫画を読むのが遅くなったように感じる。急いで読む必要がないということと、一度読んだ漫画の内容をそれほど覚えていない自分がいることに気づいたからだ。最近は1冊読むのに20〜30分ほどかかる。ただその場で大まかなストーリーを追うだけなら5分もあれば十分なんだけど、時間をかけて読むことで噛み締めながら読んでいるような気になれる(あくまで気分だけ、自分はアホなので)。
これは小説でもできるのかもしれないけど、小説は漫画の背景やキャラクター描写にあたる地の文にこそ価値があると思うので急いで読めない。
『森山中教習所』と同じ2011年ごろに『ストロボライト』(青山景)を読んだ。主人公の正の童貞感がちょっと前の自分にちょっと似てて吐きそうになった……というのはいいとして、それ以外はリアリティのない、映画のような話なので『森山中』のように自分と比較するという話でもないし、決して「いい話」ではないよなあ、と思う。面白い漫画だとは思っていたけど、当時高校生だった自分には正直難しい作品で、具体的な感想は出てこなかった気がする(むしろこの作品を語れる高校生がいたらムカつく)。
『ストロボライト』及び青山景の作品を読んだことがある人なら今更なことだけど、この作者は2011年に自殺している。自分がこの漫画を読んだのも、そのニュースを受けてのことだ。
昨日改めて『ストロボライト』を読み返したんだけど、2009年の刊行であるにもかかわらず、どうしても作品そのものではない「作者の自殺」という背景が見えてしまう。この先の漫画史(という言い方は大げさだけど)の中で、これ以上「青山景の生前に氏の作品を読む」という体験ができる人間は増えないのだ(知らずに読む人はいるだろうけど)。自分もその一人だけど、そういう読書体験ができなかったことを強く悔やんでいる。歳のせいだから仕方ないんだけど。
少なくとも自分が生きているうちは漫画は小説、映画ほど歴史的な文学にはならないだろう。「コミックは未だ黎明期である」というのは去年休刊したIKKIのキャッチフレーズだけど、自分はこのフレーズが好きで仕方がない。漫画はずっと黎明期であってほしいと思う。
たまたま久しぶりに読んだ2冊が自分に刺さった上にちょうど誕生日前日だったので日記代わりに。
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